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JB Pressに掲載されました  日本人を「再興」する逆転の思考法

日本人を「再興」する逆転の思考法
ゆっくりだが“進化”している日本人、再び世界のヒーローになる日は来る
2023.1.27(金)
岡村 進

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かつて私は外資系運用会社の社長を務め、その経験から感じた日本人の弱点をむき出しとする『外資の社長になってはじめて知った「会社に頼らない」仕事力』(明日香出版社)を執筆した。

そのなかで、発言しない、会議で質問しない……等の外国人から見た“日本人の七不思議”を列挙した。根本での評価はいまも変わらないが、時と共に人々の意識が少しずつ変化し、この“七不思議”をポジティブに転換できる土壌が生まれつつあることを発見した。

この挑戦は、我々、日本人にとって大きな活力になるに違いない! そんなアイデアを今回は提供したい。

●外国人から見た「日本人の七不思議」

実は、私が初めて外資に勤めた時、困惑したのは最初だけだった。日系企業から外資に初めて飛び込んでくる人も多かったが、職位にかかわらず、最後は自分らしく生きる道を見つけていった。

考えてみれば、日本企業では社内異動が頻繁に行われるが、みんな半年も経つと業務を回していたではないか。実は、日本人は環境変化への適応訓練が十分に積まれているのだ。この能力があれば、実は変わるのも簡単だ。

最初は、「あれっ、上司に反論したらクビになるのかな?」、「“こんなにたくさんの仕事はとてもこなせない”と言ったらいけないのかな?」と不安ばかりが先立ったものだ。でも、良くみていると、胸を張ってぴったり定時に帰る人も、遅くまで残ってガンガン働く上昇志向の人も、それぞれに文句をいったり、上司と交渉をしたりしながら何かを勝ち取っていることに気が付いた。

こうした人々の「発言力」や「交渉力」に照らしながら、日本人の弱点を考えていこう。外国人が日本人に抱いている“七不思議”は、次のようにまとめることができる。

「(1)発言しない」、「(2)会議で質問しない」、「(3)異文化を受け入れない」、「(4)金を求めない」、「(5)物事を決められない」、「(6)動かない、変えようとしない」、「(7)メンバーを鼓舞しない」。

そうそう、こう言われているよな・・・と多くの人が納得されることだろう。実はこれは、外国人エグゼクティブの「悩み」であり「叫び」だということをご存知だろうか。それは次のような理由があるからだ。一つずつ列挙してみよう。

●頑張っているのになぜ「もっとカネをくれ」と言わないのか

(1)発言しない
折角出席しているのになぜ黙っているの?
何のためにここにいるんだろう?
一度限りの人生なのに、他人の顔色なんて気にせずに思いを聞かせてほしい。
何を言ってもOK、あなたのことを知りたいんだよ。

(2)会議で質問しない
日本でプレゼンしても、質問が出ないのはなぜなの?
多様性の時代に答えは一つではなく、異論があって当然なのに、なぜ質問してくれないのだろうか?
何も考えてないのか、それとも自分の語りがとてつもなく下手だったのか…不安でならない。

(3)異文化を受け入れない
日本人は平和的だが、同化しないと仲間に入れてくれない。
最後まで日本流を押し通してしまうのはなぜか?
仲良しクラブから斬新なアイデアは生まれないというのに……。

(4)金を求めない
すごく頑張っているのに「もっとカネをくれ」と言わないのはなぜだろう?
仕事に自信がないからなのか?
何のために働いているんだろう?

(5)物事を決められない
日本人に「答え」や「決断」を求めると、なぜか周りの顔色をうかがう人ばかり。
あなたがリーダーで決定者ではないのか?
日本では一体だれが物事を決めるんだろう。
決断できない人を、昇進させることはできないよ……。

(6)動かない、変えようとしない
問題の原因と改善点を説明する力が高い。
素晴らしい解決策だと折角ほめてあげたのに……、なぜ変えない?行動しない?

(7)メンバーを鼓舞しない
メンバーをやる気にさせるのがリーダーの最大の仕事なのに、なぜネガティブなことばかり言うの?
それぞれに素敵な人財ばかりなのになぜ褒めないのか?
マネジメントの仕事は夢を語る事なのに……。

●恥を捨てて質問せよ

こうした外国人の意見をそのままに受け入れると、では実際にどうすればいいのかと戸惑う人も多いだろう。そこで、私がこの七不思議を分かりやすく「行動指針」として言葉を変換してみた。すると次世代環境対応型人財に能動的に進化する具体的な方法が、浮かび上がるのだ。

以下、見ていこう。

(1)「落としどころ」と「まぁいいか」の撲滅(「発言しない」への対応策)
 妥協を重ねると、自分が本当はなにものか、何のために日々頑張っているのかがわからなくなってしまう。軋轢を避けると目先は楽になれるが、長期的にはとてつもなく大きなつらさとなって跳ね返ってくるものだ。小さなこだわりを口に出し、目先の軋轢もいとわぬ発信を続けると、段々自分のこだわりが明確化し、自信と目標が湧いてくるものだ。

(2)一会議一質問(「会議で質問しない」への対応策)
 他人が質問や発言をしているのを見て、「張り切っているなぁ」なんてよそ事に思っているのなら、それは大きな間違いだ。恥を捨てて質問すれば、その分だけ賢くなれる。発言者は勇気を持って質問する訓練を積み重ねているのだ。質問する姿勢は半年で習慣化する。

●自身も商品もプライシングが命

(3)一チーム一異分子(「異文化を受け入れない」の対応策)
 職場が楽しい場であってほしい気持ちは分かる! ただ、もしそれが仲良しクラブの押し付けになってしまっていたら、いつか息苦しくなるし、きっとその組織は力を落としていくはずだ。人事異動時や人を集めて何かに着手する時には、「最低一人は異分子を加える」を心に刻む。異なる価値観との協働から生まれる化学反応は長期的に組織もあなたも幸せにする。

(4)自身も商品もプライシングが命(「金を求めない」の対応策)
 インフレ時代の到来。プライシングを徹底的に考え、たとえ自分には背伸びしているように感じても「強気の数字」を口にすべし。謙虚さは大事だが“謙虚仮面”は自分の実力の引き出しを妨げるだけ。給与や商品価格倍増を主張することで、強化すべき真のポイントが自ずと浮かび上がってくる。

(5)決めつける勇気(「物事を決められない」への対応策)
 判断の先送りが、日本を30年もデフレにした元凶。答えが時間とともに変わることを恐れてはいけない。それは当たり前なのだ。“いまの”答えを口に出さないと、議論もできないし、将来振り返ることもできない。 「いまの自分はこう思う!」その姿勢が人生も日本も格段に豊かにする。決めつける勇気を持とう。

(6)まずは行動!迷っても行動!(「動かない、変えようとしない」への対応策)
 自分の職位が上がってくると職責に押しつぶされそうになることがある。しかし、あなたがそのポジションにいるのは、あなたに任せたいと思う人がいることの結果なのだ。行動して失敗したら直せばいい。行動しないと直すことすらできない。「迷っても行動」する習慣を身につければ、固まった心も体も解凍する。

(7)夢を語る!(「メンバーを鼓舞しない」の対応策)
 自分らしさにこだわり続けると、いつか熱くなれる目標や夢が生まれてくる。自分に夢があれば、他人の夢も大事にしてあげたい気持ちになる。シンガポール国家教育機関の入口に掲示してあるのは“Find the Passion in you(自身の中の情熱を見つけよう)。恥ずかしがらずに自身の夢を語ろう。

 環境変化を後追いするよりも、そろそろ先手を打って自分を活かして生きたい。そもそも日本人は、みんな日々頑張っているのだから。

●日本が世界から注目される日

実はいま、海外で日本の評価が静かに高まっているという。ウクライナ戦争をはじめとする地政学的リスク等で世界は混とんとしている。そんな中で、相変わらず羊のように穏やかにゆったり歩む日本が、海外から見れば心の和む国に見えるのだという。

殺伐とした情勢下、世界が日本に“癒し”を求めているだけなのかもしれないが、日本に対する見方の変化を筆者はまんざらでもないと思っている。よくよく目を凝らせば、実は日本でも、変革は遅々として…進んでいるのだ。

日本は少しずつグローバル環境に変化している。かつて、円安が日本で働く外国人の仕送りに与える悪影響を懸念する日本人などいたであろうか? 知らぬ間に、外国人労働者は10年前の68万人から100万人増加して170万人となっているのだ。また、若手が株式投資を行い「米国が強い!」などと語る昨今のトレンドを想像していた人はとても少ないはずだ。昨年度は10兆円が個人により海外投資された。

日本人は着実に変化し始めているのだ。

まだ戦略的・主体的な自己開発には至らぬものの、環境が変わってしまえば驚くほど自然に順応する力を持っていることは証明しつつある。2022年に訪れた大幅な円安と物価上昇の下、ピンチをチャンスに転じて先に示した“日本人七不思議”をポジティブな挑戦に転換すれば、活力ある日本が復活するだろう。

ぜひ、グローバル時代にイキイキできる自己変革をはじめてほしい。

YES YOU CAN! 経験則上、日本人の底力を信じている。