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JB Pressに掲載されました どうせ避けられない転職社会、生き抜くための5カ条

どうせ避けられない転職社会、生き抜くための5カ条
外資系元トップが伝授、ポスト終身雇用を生き抜く最強メソッド
2021.3.26(金)
岡村 進

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コロナ危機が始まってすでに一年が経った。是々非々を論じるまでもなく、コロナは不可逆の構造変革の幕を開いている。いよいよ日本にも本格的な「転職文化」が根付くことになるだろう。今回は、「働き方の大変化の時代」をいかに歩けばいいのか、私なりの答えを紹介したい。

ポストコロナでは、オンラインや在宅勤務を導入せざるを得ない企業が増えるだろう。我々のような中小型企業は、すでに、リアルに会える頻度が限られても、オンラインで地方で活躍する優秀な人財を採用するメリットを享受している。複業者との緩やかな連合体も始まっている。「持たざる経営」への転換が、遂に日本企業でも始まったのだ。

世界の変化はさらにドラスティックだ。先日、私のビジネス予備校に招いた外国人エグゼクティブが、生徒たちに「コロナ時代にみなさんの競合相手は誰になると思うか?」と質問した。困惑する生徒たちに、彼はこう語りかけた。

「物理的制約の取り払われたいま、みなさんは世界中のビジネスパースンが競争相手になる」

彼は、世界のビジネスパーソンとの競争に勝たずして、企業に必要とされる存在にはなれないと考えているのだ。

●転職の思考法

みなさんは、明日から自身の勤める企業が、信賞必罰、成果次第ではクビになる転職文化に転換したとしたら、働き方がどう変わると思うだろうか。不安を感じる人も少なくないだろう。まさに私がそうだった。

私が、20年間日本の伝統的大企業に勤めたのち、転職文化のグローバル企業に飛び込んだ時に感じたショックは、いまも忘れない。自身の経験から、また多くの外資転職組の変遷を見て感じたことを、記してみたい。

●上司に言いたいことが言えたのは「クビになることはない」との安心感があったから

日系企業でも、グローバル企業でも、日々一所懸命仕事をしていれば、時には意見の相違が生まれ、どこかで上司に不満が生まれてくるものだろう。かつて日本企業に勤務していた時代には、言葉を選びながらも、最後は言いたいことを言っていた。上がそれを受けとめてくれる懐の深さがあったからだ。こちらも、どこかで「クビになることはない」という安心感があったのだといまになって思う。

転職して仕事に慣れ、「このやり方はおかしいぞ!」と初めて声をあげようとしたときに躊躇してしまった瞬間を鮮明に覚えている。

「あれっ、自分は生え抜きではなく、ローカルの中途採用組になったのだ。しかも終身雇用ではない。言いたいことを言ってしまって大丈夫か? 嫌われてクビになるのではないか・・・」と急に不安になったのだ。

それから2~3年は、昔の日系企業時代の仲間と飲みに行くことを避け続けた。かつては自分もやっていたのだが、彼らが飲み屋で会社の行く末を論じたり、酒が進むと上司の愚痴に転じていったり・・・そんな守られている彼らだからこそ許される平和な光景が羨ましくて、見ていられなくなったからだ。

「あー、自分はもう一生心の平穏のない人生を歩み出してしまったのだ」と、後戻りできない寂しさを感じた。

しかし、今の私が伝えたいのは、ここから経験した感情変化の機微と行動変化のメリットだ。

私が転職文化の企業に転職して心がけた5つのことを紹介しよう。

●転職文化に適応する5つのメソッド

1.見せかけの謙虚さを捨て自身の強みを真剣に考え抜く

成果を見せなければならないとクビになる。そのプレッシャーから、40代半ばにして初めて自分を真剣に振り返り、自分の強みを探し出す努力をした。さんざん考えた挙句、自分の強みは「しつこさ」にあると結論付けた。相手にNOと言われてからが自分の勝負時と捉え、今まで以上に粘り腰が強くなった。

2.日頃の付き合いを通じて自分を値踏みする

次に自分がクビになったときのことを積極的に考えるようになった。他の会社で汎用性があるのかということである。それまで何気なく付き合っていた他社や他業種の仲間と話しながら、自分ならその会社の何がつとまるか、どの程度の仕事が出来そうか、自身を値踏みするようになった。

3.人の異なる部分に目を向ける

社内は転職組ばかりであったので、他の会社のやり方を真剣に聞くようになった。特に注目したのは自分のやり方との違いである。終身雇用の恩恵を受けていた時代には、「みな同じ仲間だよね」と共通点を探していたのとは、真逆の行動をとったのである。また、かつては社内に閉じこもりがちだった私が「ネットワーキング」を大切にするようになった。週末で疲れているときでも、出会いが将来価値を上げると考えて、人に会いに行くようになった。

こうして、仕事自体の向き合い方は様変わりした。

4.顧客との向き合い方

仕事が営業か内部管理かによらず、意識的に外部取引先との接点を増やし、今、所属する会社だけの付き合いにしないよう心がけた。自身のファンになってもらい、他の会社に移ってからも取引を継続できるよう人間関係を密にするわけだ。転職文化は、取引先を食い物にすると揶揄されることがあるが、私の実感は逆である。むしろ誠実な関係こそが求められるものなのだ。

5.将来を予測する

自身の腕だけで勝負するようになれば、将来性のある転職先を見極めていきたいと考えるのが普通となる。次世代の環境がどう変化するのか、そのときに有効な商品を持っている会社はどこか、自身のキャリアのために大局観を養うようになるのだ。その大局観が仕事にも役立っていくという好循環が生まれていった。

終身雇用でない世界の緊張感に慣れるまでに一つの試練があることは間違いない。ただし、多くの勤勉かつ部門異動等で順応性を高めた日本人なら意外と簡単に乗り越えられる壁だ。いまのうちから仕事と向き合う意識を少しだけ変えておけばよいのだ。

●驕れる上司も敵ではなくなる

もちろん人によって仕事の距離感は異なり、私のように人生のかなりの時間を仕事に注ぎ込んでいる人も、定時になると荷物をまとめてさっと帰る人もいるが、それぞれに信念を持って生きている。

仕事への打ち込み方こそ異なれど、共通しているのは、自分と向き合い客観視し、生き方を定め、自身の汎用性を確認した人財の強さである。

終身雇用が崩れるというと、会社に来たら机がなくなっていたというようなドラスティックな世界を思い浮かべがちだが、実際は違う。

外国人も日本人も同じ人間だ。そんな不安定な組織でよい仕事ができるわけがない。因みに私がかつて勤めていたグローバル企業では、リーマンショックで財政的に追い詰められるまでは、本国勤務の7-8割が結果的に終身まで勤めあげたと言われている。

またこれも誤解されがちだが、実は転職文化企業では、終身雇用の企業よりも上司と部下の力関係は対等に近い。確かに上司は、部下の生殺与奪の権利を握っているので途中までは力関係は上だが、いつしか大逆転が起きる。

「こいつの下では働けない」と部下から判断されれば、その部下が転職すると上司の悪評を垂れ流すリスクがあるからだ。驕った上司は社会的に報復を受けるシステムになっているのだ。

日本企業が徐々に向かいつつある転職文化も慣れてしまえば、むしろ人間的な生活を手に入れいるきっかけになるだろう。

私は若手に、「80年代の就職と今の就職を、選択できるならどちらを選ぶか」と聞かれたことがある。答えは、「寸分の迷いなくいま!」である。

生涯成長を求める生き方のメリットは、より長くなる人生において想像以上に大きいのだ。