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西日本新聞(朝刊:2020/4/19)に記事が掲載されました。

「今こそグローバルを考える時」
社説・コラム面にて、弊社代表の岡村進による拙稿です。


◆多様性時代

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 コロナショックで、外国人の姿が減った。街中で片言の日本語を耳にすることが減り、寂しく感じる方も、少しほっとしている方もいるのではないか?

 各国が移動制限をかけたので、暫(しばら)くは閉ざされた環境が続くだろう。そしてコロナ後には、反グローバルの議論も一部で高まると予測する。

 なぜ外国人に就労や居住の門戸を開放したのか、冷静に考える絶好のタイミングだ。

 グローバル化の代償の一つは、異文化ストレスだろう。外国人を採用しても主義主張の強さに匙(さじ)を投げる経営者は少なくない。気配りや礼節という日本の美徳が失われるとの嘆きも聞こえる。

 私は学生時代、母子寮で子供の面倒をみる活動をしていた。世間の目を忍ぶ生き方をしている家族もいた。また手話を習って聴覚障害者と交流、サポートするサークルにも入っていた。様々(さまざま)な不便があることを知った。人はみな条件こそ異なれ一生懸命生きている。それなのになぜ普通と違うプレッシャーを感じて生きねばならないのか?

 そんな疑問を封印し日本の民間企業に就職、ひょんなことから世界50カ国に展開する金融グループに転職することになった。拝金主義と覚悟して飛び込んだ世界で目にしたのは、専任のプロフェッショナルまで置いてボランティア活動に力を入れる企業文化だった。久しぶりに手話を復習し、児童養護施設の子供とのイベントにも参加した。人の役に立つ喜び、理不尽さへの怒りなど、青臭い昔の心が蘇(よみがえ)った。

 最近いくつかのショックに出くわした。人財アジアが運営するビジネス予備校で、ある外国人生徒が「日本人は同化しないと仲間に入れてくれない」と発言し、我々(われわれ)日本人は息をのんだ。また、知り合いの外国人女性は日本人上司の怒り方が怖くて退職したと涙を流した。国籍の差ではなく、個性の否定が背景にあると感じられる。日本人は既に美徳を失いつつあるのではないだろうか?

 長くグローバルビジネスの最前線で働き、軋轢(あつれき)もあったが学びも大きかった。元々自信の持てない私に、自分らしく生きる覚悟をくれた。人はそれぞれに彩り豊かだ。逆境の時も個性を尊重し合う世界を作りたい。皆が生き生き幸せな顔になれる場作り、それが人財育成に込める思いだ。